■ 情が薄いという訳ではないけれど

今すぐあそこから連れ出してしまえればいいのかも知れないけれど
だけどそうするには、
お互いの枷が少し多過ぎるように感じる。

そう思ってみて、
嫌な大人になってしまった、と感じた。
嘘吐きで、
弱虫で、
心よりも理を優先しようとする、とても嫌いだった大人。

一緒にどこまでも行こうと思えるのに、
どうして一緒に行けないのだろう。
きっと、あの人はあそこに居た方が幸福でいられる、
そして、そのことは僕のあの人も知っているのだ。
そう思えるのは、
けれども、
たぶん、まだ情熱が足りないだけだよね。
そう思ったりもする。

どこまでも一緒に、と思うだけの気持ちがまだないんだと思う。
そう思える人が居るのかどうかは知らないけれど。



口が治らない。
「口が痛くて喋れないからまた病院に行ってきます」とメモ書きしたのは昨日だったはず。
どうして、
「ノドが痛いの？　口内炎？」
と問い直されねばならないのだろう。
今日は昨日の明日。

この温度差だと思う。
捻れたベクトルとも言う。

職場の人に、
「ふたりだったら看病して貰えたでしょう？　氷枕とか」と言われ、
そんなのフツーにあり得ないと思っていた。
そしてそう言ったら、それがあり得ない、と言われた。
姉弟だから？　同居人だから？

たぶん。
たぶん、以前は僕もそちら側だったと思う。
自分の期待を相手に上乗せしていた頃。
けれどもそれは間違いなのだと気付いたその頃。
家族は他人。
嫌いな我侭な人たち。

だって
また痩せている顔に気付かない。
4日目、水分しか摂っていないのに。

以前はそこに期待をしていたけれど、
家族なんだから？
けれど今はもう何とも思わない。
他人なんだから。
だからとても気楽。


けれど、
だから家族は信じないんだよね。
だから信じて居たかったんだよ。
信じて痛かった。
もう信じない、それがフツーになっちゃったけれど。