■ 死ぬということ。

人が死ぬときに、
たぶん、悲しいんだろうなって思う。
泣くんだろうな、って。

けど、
僕は、祖母が亡くなるときに、悲しかったのかな。
僕は、楽になりたいって、どこかで思ってた。
死ねば楽になれるって、どこかで思ってた。
だから、泣き崩れる母や伯母を見ながら、嘘つきって思ってた。
あなたたちも楽になったんでしょ？　て思ってた。

けど、違ったみたい。

たぶん、素直に悲しかったんだと思う。

僕は？
悲しかった？

祖母の笑顔がもう見られないのは悲しかった。
動かない冷たい身体は悲しかった。
約束を破ってしまったことも。
どんなに呆けてしまっても、それでも、笑う顔はかわいかった。
介護に疲れてしまっていたけれど、
それでも笑顔を見ていたかった。

やっぱり悲しかった。
そして楽になった。
きっと僕も、きっと祖母も。

単純なことばかりじゃない。
けど。

だから、
何が普通だとか、
そういうの、僕はあんまり好きじゃなくて、
人にはそれぞれ事情があるんだよ、って思う。
泣けない事情も、
泣かない事情も、
泣く事情も。
けれど、それは全てが本当だと思う。

長く生き過ぎたのかも知れないね。僕も。