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ばあさんの生き甲斐はオレだけだからな、オレが死んだらばあさんは死ぬだろうな。いや、あの息子と娘たちに殺されるかもな。悲嘆に暮れる年寄りくらいなら、奴らにだってヤれるだろう。
ばあさんは心底、優しいというのに、奴らはいつも腹黒い顔でしか笑えない。あのばあさんからどうしてあんな愚鈍な間抜けが生まれたんだ? ばあさんの財産を計算して、ついでに残りの命も計算してやがる。そのくせ、自分たちは何も出来ずにおどおどしてばかりだ。
そんなに金が欲しいのなら、とっととばあさんを殺せばいいものを。毎日飲ませているあの薬をひとつ取り違えるだけで、きっと楽に逝ってしまうだろうに。車椅子を誤って少し押し出せば、あのスピード狂が轢き殺してくれるだろうに。
その後で、ゆっくり嘘泣きをすればいい。どうしてこんなに早く亡くなったんだ、と泣いて、笑い狂えばいいものを。
奴ら、そんなこともできないなんて、臆病過ぎるぜ。
けど、オレは奴らが嫌いじゃないんだよな。
オレはばあさんが大嫌いなんだよ。
善人面した善人のばあさんに撫でられるのなんて、反吐が出るほど真っ平、嫌いなんだよ。ただ、オレは奴らよりも賢いからな、うまく尾を振ってやるのさ。嬉しくてたまらないっていう風に。ばあさんのさみしさを理解しているのはオレしかいないっていう風に。
そうして、今のばあさんはもう、オレなしでは生きていけなくなった。
そろそろだな。
奴らがいつまでもばあさんを殺せないでいるから、オレがばあさんを殺してやるのさ。善人面した善人のばあさん。オレが死んだら、きっとオレに墓をくれるんだろうな。オレを殺したヤツらさえ赦して、善人面して泣くんだろうな。
そうしてそのまま泣きくたびれて死ねばいい。
いいざまだ。
そら、ちょうどスピード狂がやって来たぜ。あの車の下敷きになれば、ようやくオレはばあさんから解放される。そして、あのばあさんを殺すことが出来るんだ。
車が飛び跳ねた。
さあ、今だ。