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ほんとうのことを
人は
どれだけほんとうに言っているのだろう
そう思うと、
全ての笑顔が嘘に思えて、
まぁね、他人の笑顔は嘘でもいいの
自分の笑顔が嘘に思えると、
あぁ、こんなにも心許しているはずの人にも
僕は嘘を吐いているのか、と落胆してしまう。
そして気分が悪くてどうしようもなくなる。
ほんとうのこと
楽しい人だと思われているから楽しい人であろう、
まじめな人だと思われているからまじめな人であろう、
優しい人だと思われているから優しい人であろう、
そういう風に僕は歩いてきた。
その、楽しさやまじめさや、優しさは
強ち、全てが嘘ではないのです。
けれど、
それがほんとうか、と訊ねられると、
それはほんとうではないのです。
ほんとうはもっと汚くて悲しくてぐちゃぐちゃしていて
我侭で自分のことしか考えてなくって。
例えば、全員にほんとうのことを言おうとは思わない。
けれど、でも、全員に嘘のことを言っていたら、
ほんとうは置き去りにされてしまって悲しくなってしまう。
僕は、一体、誰にほんとうを言っているのだろう。
ほんとうのはなしをしよう
もともと鬱な性格だったのだが、
毎日同じ繰り返しのデスクワークで、
話をする人も限られている、なんていう仕事は向いていなくて、
転職を何となく考えている矢先。
憂鬱に夜の散歩を繰り返したり、
ジムに行ったりしても気分は晴れなくて、
相変わらず、名前も知らない人と寝たりしていて。
ようやく始めたカフェのバイトが楽しくて、
仲良くなった友達も居たりして、そんな矢先。
祖母が倒れた。
僕は毎日看病で、
お金はどんどんなくなって
けれど、お金が要ると母に言われて(言わせて)、
僕はどうしようもなくて身体を売ったりして、
借金ばかりで暮らしていて。
その僕の転職先がようやく決まったとき、
祖母は病院を退院し、特養に入った。
その祖母が先日亡くなった。
僕はもう泣かなかった。
泣いている母も伯母も嘘っぽいのに、本当だった。
僕は祖母が亡くなる日をどこかで心待ちにして、
その日には、
母にも伯母にも血縁の人たちみんなに、
「これでみんな楽になれたんでしょう?」
と言い放つつもりだった。
けれど、そんなこと言えなかった。
みんな悲しかった。
看病をしていたとき、僕はつらかった。
自分もつらかったし、
つらい祖母を見るのもつらかった。
そのとき傍で助けてくれる人は誰もいなかった。
僕はとても苦しくて、
左手首をうすく切ったり、右腕に爪あとを残したりして、
そうして意地でも笑っていた。
僕だけは泣く訳にはいかなかった。
平気な顔をして笑い続けることが、僕の役割だった。
母にも伯母にも、父にも姉にも毎日毎日会っていた。
泣く祖母にも毎日会っていた。
毎日僕は笑っていた。
毎日帰る夜道で、
泣きながら僕は電話をして、
そのときに好きだった人とも別れてしまった。
その祖母が亡くなった。
僕にとって、祖母だけがそのときの同志だった。
いいところも悪いところも見てきた、
見せてきた祖母だけが同志。
だから、どうしたいのか、もう分からなくなった。
僕のつらかった過去の時間を
誰に復讐すればいいのか、
誰に慰めてもらえばいいのか、
もう忘れれば良いだけなのか、
それが、もう分からない。
祖母は不幸だったとは思いたくない。
もしも不幸だったのなら、
その不幸は全部、僕が背負おう。
だから、
祖母は今も笑っている、そう思っている。
桜の木の下。
春の陽光が美しい、青空の下で、
また来年見ようね、と言った。
公園で笑っていた祖母は、とても愛らしかった。